2006/06/23

黄楊道という名前

その昔、私は「黄楊道」なんていうホームページをやっていたことがあり、そもそも、「黄楊道」っていったいどこから来た名前なのかと、みなさん思われるかもしれません。

それは、実は、「つげの櫛」から来ています。

まだ20代前半だった頃の私は、今とさほど変わらない趣味・嗜好を持っており、当時夢中だったのは、「櫛」。
そもそも私の櫛好きは、その頃始まったものではなく、小さい頃、祖母にもらった小さな丸っこいつげの櫛に出会った時から始まったのでありました。

そんな訳の分からない趣味から、大学の頃の卒論は「櫛」・・・。
幸い日本史学を専攻していたのをいいことに、ちょっと分野は違うんだけど、日本史より興味があった民俗学を掠めるようなカタチで、櫛をテーマに選びました。

「つげ」というのを漢字にすると「黄楊」・「柘植」の二種類があがってきますが、万葉集なんかに出てくるのは「黄楊」の方だった気がします。
というか、仮にも専攻していたのに、こんなにうろ覚えでよいのだろうか!!

ちゃんとした職人さんが作っている櫛やさんというのは、もう数えるほどで、その中でも私が贔屓にさせていただいているのが、「京都の十三や」さんです。
「十三や」というのは、古くはいわゆる「櫛や」という意味なんですが、櫛=くし=苦死に通じ縁起が悪いということで、「くし」の「く(九)」と「し(四)」を足して、十三、それで「十三や」となったそうな。

そんなこんなで、今でも八百屋があちこちにあるように、昔はあちこちに「十三や」があったものと思われますが、現在「十三や」の看板を掲げているのは、東京の上野にある十三やと京都の十三やのみになりました。
一説では、東京の十三やのほうが、ほんまもんだ!という声もありますが、京都の十三やの方が、櫛に厚みがあって、私はそちらの方が好みです。
(いわずもがな、両方持っております・・・)


最近、忙しくてちょっとさぼっていましたが、久しぶりに、櫛のお手入れをしました。
たっぷりの椿油に浸して、櫛歯の汚れを浄めます。
油分が櫛歯全体にゆき渡ることによって、よりしっとりとした梳かし心地になり、梳るだけで、髪の十分なお手入れになるというのもよいですね。

また、艶やかな櫛の黄金色が、黒髪にあてた時、まぁよく映えること。
つるりと滑らかな櫛の肌を眺め撫で、夜のたのしみにするのも、またよろしいものでしょう。