2006/02/14

竜宮城のある国で

先週末、沖縄の八重山へ行ってきました。
今回、機会があり、八重山上布の織元を訪れることができました。

まだ自分で着物をあつらえたりしたことのない私にとって、何十万もする黄八丈だとか大島だとか、南国系の織りの着物なんて、まったくもって手が届かぬ遠い遠い存在で、最初は興味すら湧きませんでした。

ですが、着付け教室の生徒の方が「これもらったの♪」と嬉々として見せてくれた黄八丈の、あまりの渋い深みのある色合いに、あまりのしゃきっとした手触りに、あまりの表面の艶っぽさに、なんてすてきなんだろう、と目を奪われてからはしばらく、黄八丈が私のアタマの中から離れませんでした。
その後しばらくは、リサイクル着物やさんなどに行くにつけて、黄八丈に目が行ってしまいましたね。
しかし、中古でも6万くらいはするんですよねぇ。
6万かぁ。
おいらのマックス単価は今のところ2万5千円くらいなので、到底及びません。

そんなこんなで、徐々に、そういった紬などに興味を持ち始めました。

沖縄はもうずいぶん前から毎年行っていて、八重山上布の存在も知っていました。
でも、きちんと見たのはこれが初めてでした。

くっきりした青い空と透き通った海とここちよい風がそのまんま織物になった感じ。
海のどこかには、美しい珊瑚と色とりどりの魚に囲まれた、竜宮城がきっとあって、水平線のずっと向こうからふくよかな神さまがやってくるような、そんなことを思わせる、吹き抜ける風のような、さらっとした涼しげな布。

ああ、この島で、この布でできた着物を、ゆらゆらと風にそよがせながら着たら、いったいどんな思いがするのだろうかと思ってしまいました。
どんなに暑くても絶対がまんできると思いました。

実演機織りをしている方にこれが織り終わったらいくらくらいになるんですか?と聞いてみたら、ちょっとまったくもって手が届かな過ぎる値段でした・・・

が、少しずつ積もっておいて、いつか、いつか、と思えるほど、本当に涙が出るほどすてきでした。


着物を大好きになって、着るようになって、逆に、変なこだわりみたいなものがなくなったように思えます。
というのは何でしょう、本当にはじめの頃は、現代ものはかわいくなくて、昔のものはかわいいんだ!とかそういう妙なこだわりがあった気がします。
でも、今は、アンティークのものではすてきなものはすてきだし、現代のものでもすてきなものはすてきと素直に思います。

そしてそれぞれのシーンで、さらりと自然に着こなせたらすごくいいなと思います。

今まで好きで集めたものたちを大切に扱いたい、そんな思いが大きくて、最近は新しいものを探すより、手入れの方に興味が湧いて来ています。

そんな着物に関するアレコレを、病床にてホットケーキをむしゃむしゃ食べながら書いてみました。